伊勢和紙:大豐和紙工業株式会社 ~伊勢神宮のお神札からインクジェット対応和紙まで~

伊勢神宮のお神札からインクジェット対応和紙まで (3/3)

全国の神社で配布されている伊勢神宮のお神札(おふだ)。伊勢和紙さんではそのお神札をお納めしています。それと共に、インクジェット対応の和紙の販売もされて、併設の施設・伊勢和紙会館などで写真展・展示会を積極的に開催されています。  (取材日:平成22年12月17日)

ある時期もう手漉きは諦めようと思ったことがあった

その部分があるから生産量を増やすために大きくすれば良いじゃないって。そんな簡単にはいかない部分がかなり多いのでしょうね。それで言うとやはり自分自身が今できる範囲の中から少しずつ堅実にできる範囲の中でやっていくというのが重要なのでしょうね。

その点、このインクジェット用の和紙というのがこれから大きくなっていくのだろうけれども、そこの中でどういった立ち位置を伊勢和紙さんがやっていくのかなということで言うと、多分「何も手を加えていない」ところが一番キーになってくるのだろうなって。その部分、少々値段が上がったとしても付加価値があるのだろうと思うんですよね。ロットが少なくても粗利を稼げる可能性がある場所なのかなと。

粗利というか、売っても売っても何もお釣りの来ない。それって本当にしないほうがましだってことがありますので。新たに注文を頂くのだったら、それは今までよりは利益が上がるものでなければ意味が無いですよね。そんなものがあるのかと思いながらずっと来てましたから。

極端な話、お伊勢さんにお神札さんの紙をお納めします。それはお伊勢さんの一年間必要な量をほぼ一年間掛けてこしらえているわけなんで。そうなるとそれだけの費用というものがその紙で賄われなければ会社自体が存在できないわけですよね。事実それでやってはきたんですけれど、やっぱりそれ以上のことができなくて。その中で手漉きというものを。漉き手がいなければどうしようもないんで、ある時期もう手漉きは諦めようと思ったことがあったんですね。

そうなんですか。

はい。先代の時代、私も居りましたけれども。もうその当時のベテランの漉き手が引退すると同時に伊勢での手漉きは終わりだと腹を括ったことがあったんですけれども、従業員の中から「私たちやりたい」という人が出てきたんですよ。せっかく今までしてきたんだからって。それだったらということでその方をお師匠さんにして3人習ったんですよ。そのときは伊勢和紙の手漉きは繋がったわけで。今いる2人、1人は後から来ましたけれど、そのときに習った3人の中の1人が育てたんです。まだ30代後半ですけれど。それでやってくれています。

伊勢和紙

きちんと受け継がれることになったわけですね。

はい。そういう風にしてお伊勢さんにお納めする紙も手漉きのものももちろんあるんで、それは当然続けているわけなんですけれども。大変ざっくりとした話で厳密に原価計算して、この紙はいくらですって納め方はしていないんですよね。この紙はいくらこの紙はいくらと決まってはいますけど、本当にトータルで。ひとつひとつの原価計算で紙の単価が決まっているわけではないんで。機械抄きも手漉きも区別が無いような価格帯で。少しずつ直しては頂いているんですけれどね。だけれど手漉きだけ見れば笑っちゃうような(笑)

そうなんですか。

じゃあ今度、そうじゃなくて一般の人たちに使っていただく紙を手漉きでしましょうとなったら、新しく増やすんだからそれだけでペイするものを増やさなきゃ意味が無いじゃないですか。

そうですね。

そこで値段の付け方がぜんぜん違うわけであって。新しく増やすということはそうやってちゃんと利益が取れるものを増やすのでなかったらしないほうがましです(笑)

ということでしっかり値段はつけて、お店に出すにしてもこの紙はこのようにして作っているのでこの値段ですと。そういう意味で、なるほど紙は良いけど、紙が良いことはわかったけれどとてもそんなものでは売れないからってお店が大半なわけですよね。その中でもどれだけ売れるかわからないけど置いてやるよって少しずつ出てきて。機械の紙もそうなんです。実際に新たにインクジェット用紙を始めるわけですから、うちとしては今までよりもうんと高い値段をつけて。だけれども世間様から見れば「うん、安いね」と思って使っていただけるもの。それがたまたまひとつ見つかったのがこのインクジェットの紙であったんで。もうそろそろ次の上手い手を見つけておかないといけないんですが(笑)

なかなか(笑)どの産地もみんなそれで頭を悩ましているところですからね。

恐々始めたものですから、もっとちゃんとした値段をつけておけば良かったかなと今では思っていますよ(笑)

もう少し強気にやっておけば良かったかなーと(笑)

良かったかな、と(笑)今からは変えられないし。

後から追加するものはそれなりに割高には設定していますけれどね。割高というか、ちゃんと理由が付くように考えていますけれどね。


早晩うちだけじゃ足りなくなるので色々な所がやってもらえれば

やはり問屋などを通しての販売となると上代価格という形でやっておかないと後々難しい部分があるじゃないですか。

実際にはですね、問屋さんというかパッケージメーカーですね。そういうところに入れるとしたら、どうでしょうね。お店で並ぶ値段のまず1割位じゃないかと思うんですね。この紙が1,000円だとすれば100円で出さなければいけない。直接店に卸せばそこそこの割合でいけるのでしょうけど。そういう価格設定しかしていないんですよ。

だからワンクッションまでのところまでしか考えていない。そうなるとパッケージメーカーさんとかになると2クッション、3クッションとかになるじゃないですか。

無理ですね。

やっぱりそこの部分は厳しいですよね。

話は変わりますけど、インクジェットプリンタ対応の和紙ということでプリンタメーカーさんなどからのアクションといったものはあるのですか。

はい。せっかく売ったプリンタが稼動していないんですって。

プリンタメーカーさん、エプソンさんとかキャノンさんとか色々ありますよね。

各家庭にたくさんプリンタがあるけれどもほとんど動いていない。動かして欲しいと。要するにインクで稼ぎたいわけなんですよね。もちろんペーパーもそうなんですけれど、ペーパーはもういいと。とにかくプリンタが動いてくれないことには、これ以上プリンタがそう売れるわけではないので、持っているプリンタを動かして欲しいんだと。そのためには和紙でも何でも良いから協力して欲しいと。そのようなことをメーカーの方が口になさるようになってきた。

今までは「和紙ですか?とんでもない。使わないでください」が最初でしたよね。今でもサポートしている立場の方はそうなんですけれど。純正紙ではないので保障しかねますと。サービスの方はまだ仰いますけれど、営業の方はだいぶ風向きが変わってきまして、プリンタの稼働率を上げるために和紙も協力してくれと。協力と言ってもそんなとんでもない協力ができるわけじゃないんですけれども。そういう風な風向きにも少しずつなってきていますので。そこは販売店の方にも協力して欲しいところなんですよね。

そうやってプリンタの稼働率を上げることによってプリンタの面白さも広がりますし。和紙だけじゃなくってインクジェットというのはどんな紙でも使えることが本当にメリットなんで。恐れずに試してみれば、その中で自分が気に入った紙を選んでもらったら良いわけですから。それがうちだったら非常にありがたいのですけれど(笑)

伊勢和紙:インクジェット対応和紙

和紙全体で使う量が増えて行けば結果として和紙全体の底上げにはなっていくというところはあるのでしょうね。

ある意味どの紙だって印刷できますよと言うのは、伊勢和紙でなくても良いことを意味するわけなんで。それを言うのに躊躇が無いわけではないんです。無いわけではないのだけれども、早晩うちだけじゃ足りなくなるのはわかっているんで色々な所がやってもらえれば良いと思っているんですよね。


伊勢和紙 : 大豐和紙工業株式会社
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