筑前秋月和紙: 井上賢治 ~プリンタにも使える素朴な手作りの和紙を~

プリンタにも使える素朴な手作りの和紙を (3/3)

春の桜が有名な秋月で和紙作りをされている井上賢治さん。地元ならではの紙ということで葛による和紙やプリンタ対応の和紙作りなど様々な新しい試みをされています。明治維新前後の興味深いお話とあわせてご覧ください。 (平成23年1月17日)

古文書を印刷するとえらい面白いとですよ。

私は個人的にインクジェット対応の方向に行かざるをえないだろうというのが本音ですね。

あと、コピー機でしたね。コピー機がいま苦心しちょっとですよ。薄い紙がね、どうしても平滑性がないからなのか皺になるんです。キューッと回し込んで。ちょっと厚いとサーッと行くんやけど。あと、あんまり厚すぎると折れていく。ポキポキッと。ローラーがずっと回して来るやないですか。じゃけ、ランチョンマットとか作るときがすごく苦労して。ランチョンマットを作るとすごく人気でからですね。

これは業務用のコピー機なんですよ。コピーて言うと軽く聞こえるけん、複写て言うんですけどね。コピーしたって言うと軽いでしょ(笑)

そうですね。

これも一回コピーしたやつを、またコピーするんですよ。そのままじゃなくて。そのままやったらもっと鮮明なんでしょうけど。一回コピーしたのを原本にして、またそれをコピーするんですよ。そうしたら色がもっと……、ちょっと違う、、、本物じゃないけどちょっと絵っぽい色になるけんですね。2回コピーして。

複写機による錦絵

これは面白いですね。

で、これレーザープリンターになるんですかね、普通の業務用コピー。じゃけ、例えば裏打ちするにしても滲まんとですたい。レーザーやけ。インクジェットは裏打ちするとワァーッとなるでしょ。

散っちゃいますものね。

うん。じゃけ、僕としてはこういう紙をどげんして作るかなと考えよるんです。

なるほどー。

コピー機をもうちょっとそういったのに対応したものになって欲しいなて(笑)

例えばこう曲げられるとね、どうしてもこの辺が厚手になると折れ目が出てくるんで。

そうですね。

あとは、このコピーの筋をどう消すかとかですね。もう色々と。これはもうそのまんまにしちょるけど。修正液でこう消して原本を作ってですね、するとかですね。

お客さんも喜んでお使いになっているんでしょうね。

村田兆治さんのお兄さん、速球王かなんかのね。広島におんなるとかな。たまたま知り合ってからですね。送ってくれよ~!て言うてから、うちの半紙のこのサイズをプリンタでできますて言うたけん。それを勧めてですね、自分の印刷したやつを出してから、作品展とかやったりして。

多分、秋月和紙さんもプリンタでこれだけ印刷できるということを、大々的に出したら結構お客さん喜ぶんじゃないかなぁと気はするんですけどね。

そうですね。あと、大きさでしょうね。工業とかになったら大きな紙が重宝されるちゃね。例えば障子紙にね浮世絵を印刷して、うちの旅館の障子紙を貼りたいとか。そこにあるんですよ、清流庵ていうのが。一回それでしてインクジェットでしてみたら、やっぱりどうしても失敗したものがあって。それでも成功したものはきれいに貼ってもらったばってん。この前見に行ったらきれいに貼られちょったから。良いんだなと。

もっと印刷用に行く流れというのは出てきてくれば良いのになと常に思っているんですけれど。

古文書を印刷するとえらい面白いとですよ。郷土館が好きやけん、郷土館に行って古文書なんかを印刷するっちゃ。させてもらう(笑)普通にコピー機で。結構、綺麗でしょ。

これも和紙で複写機を通したもの。

そうです。紙の色がね、そのまま色で出ちょるけん。

これはうちのご先祖の……。いまさっき言った秋月党の乱に行っちょったけん、捕まったんですよ最終的に(笑)で、28年の恩赦で許しちゃると。その証明書をコピーしてみたんですよ。そしたら何かこう違和感がないちゅうかね(笑)結構綺麗でしょ。

複写機による古文書

そうですねー。

本物とまでは行かんけど。こんなんでも充分に良いなぁと思って。濃淡が綺麗に出てくるから。

書関係は本当に面白いですね。

書を印刷するのは面白いかもしれんし。これで絵本作っても面白いかなと思って。ときどき繊維が引っかかったり剥がれたりすると皺になったりするんですけど。

カレンダーの印刷とかもこういうのでできるんだなと思って。手間暇は掛かる。ひとつひとつ手差しでいくけん。一日掛かっちょらないかん。ただ何にしてもね。

これは知り合いの人が書いたものだけど。実物よりも一回コピーした方が見やすくなる。

少し良い具合にぼやける感じになるんですね。

そう。こういうの綺麗だなと思って。これでランチョンマットとか良いんじゃないかって。ランチョンマットと言ったら防水、汚れるやろて。もう一回しか使われんやんとなるんですよね。ああそうかって。洗える紙かて思って(笑)図書館に行って本を読みよったら蒟蒻糊で引いて揉んで、また引いて揉んでしたもののランチョンマットが何回も水洗いができて良かて感じで書いてるじゃけんね。ああ、これもやってみないといかんとやろね、て。実際見たことないけ、どんなものかわからんけど。


印刷が仕上がったときに活版には印刷に力がある

そうすると最近、秋月和紙さんとしてはさっきの葛の入っているものと、元々は書道がメインだったけどこういったプリンタ関係のものが自分たちとしては方向性として面白そうかなと。

そうですね。やっぱり自分が書いたものとかを自分で印刷したりね。手軽にていうか、ある程度手を掛けながらできる、なるべく失敗しない紙ていうのを作っていければね。良いのかなと。

やっぱり、ワープロなんかでやった文字を印刷するにしても普通の用紙だと味気ないし。それをパソコンの中だけで治めるのではなくて、こういった絵というのはやっぱり印刷してみて見るところの醍醐味というのは残っているんだと思うんですよね。

うん。これにあとは好きな字でも書いてね。しゃらしゃらと書けばもっと良いやろなて。

複写機でやったものだったらだったら掛け軸とかにもすぐにできちゃうし。

うん。これだったら滲まんけ裏打ちできますよ。ちょっと厚い紙で印刷しても大丈夫やろな、これぐらいやったら。

これもそんなに余計な混ぜ物なんかも何もせずに。

いやいや、普通の漉き方ですね。

和紙だから印刷できないというイメージが何か一人歩きしてしまっている感じがありますよね。

うん。やっぱりオフセット印刷の影響でしょうかね。

秋月和紙

なるほど、そっちの方の影響が。

吸い上げてドンドンしきらんばいて。親戚にもおるんですよ、印刷屋が。大きな会社やけど。うちの紙はせんて(笑)印刷屋やからしてくれるかなて聞いたら、せんて(笑)

でも、活版印刷でも良いですね。

活版印刷良いですね!

山の向こうに古ぼけた一軒家で昔の活版屋があるんですよ。それはうちの名刺をしてくれているんですよね。うちの親戚が、うちの紙を買っていってそこに印刷させるんやけど。良いですよ!

やっぱり印刷てなんで活版が潰れん、、消えないかていうと、印刷が仕上がったときに活版には印刷に力があるち。

押してから付けるんでしょ、あれ。ガチンッ!と。じゃけ、普通のインクジェットは吹き付けて湿らせる印刷の仕方じゃけん、印刷に力がないらしいんですね。例えば名刺とか案内状とかそういうのを配るときに普通のインクジェットの印刷じゃやっぱり力がないと。ところが活版印刷はね、やっぱりガチンッ!ガチンッ!て押した力があるけんね。それが何か良いのだと。

じゃけ、そうかと思うてですね。それは良い言葉だなぁと思うてですね。力のある印刷面ていうかですね。見たらやっぱり、凸凹になっちょるじゃないですか。活版印刷はね。ああ、やっぱりこればいて思うて。ワープロにしても同じ状況ですものね。同じ様な感じじゃけ。これもこればいて。

そうですね。活版印刷はもっと和紙との関わりでもっと評価されて、再評価されて良いかもしれませんね。

良いと思います。

コラボするとにはですね最良のパートナーじゃないかなと。ただこれをする人がこの辺はおらんけん(笑)

大変じゃないですか。こうひとつひとつ字を拾って。カチッ、カチッ、カチッてしよったもんね。あと、やっぱり印刷所の匂いが良いな。古い機械があって、インクの匂いがおもいっきりして、壁にはだぁーーーって活字が並んじょっとですよ。二階もあって、二階にも活字が並んじょっとですよ。それは古い家、古民家やった。昔からしてるんですて言うから。

いやー、活版印刷良いですね。実際活版印刷は、注目を浴びているみたいですね。活版印刷の再興という形でこだわっている人たちの記事なども何回か見たことはありますね。いまひとつの、、時代の一歩先じゃなくて二歩先ぐらいの感じで動いているジャンルかなぁと思ってはいるんですけど。なので先行き過ぎちゃって、その面白さをまだみんながわかっていないというか。だけど、遅かれ早かれそこにみんな注目し始めるのかなと。

うん。ああいうの初めて見たと思って感動したもんね。機械がね、全部金属じゃないんですよ。竹が一部使われちょるところがね。何これー !? て。金属ばっかりじゃないやん、て。そういうところが手作りの活版印刷所の何かホッとするところ。普通の大きな機械がジャランジャランとするよりも、ガチャン!パタッ!っていいながらその一部には竹が使われていると。ああ、この竹のしなりが多分印刷にも良んやろなて思うところがね(笑)


筑前秋月和紙処
〒〒838-0001
福岡県朝倉市秋月433
Tel: 0946-25-0517
Blog: 古処山のふもとの和紙屋の日記
Email: akizukwashi1879@k-int.jp