梼原和紙:ロギール・アウテンボーガルト

紙ってすごい繊細だから、みんなオープン、ホッとする (1/3)

オランダ出身のロギールさん。高知でも特に寒い地域である梼原で伝統的な和紙作りと旅館かみこやを運営されています。今の和紙作りが抱えている問題、それとともに自然保全とは何なのか。非常に示唆の多いインタビューです。  (取材日:平成23年2月7日)

人が上手に自然のリズムに添いながらまとめてくれたのが和紙

ロギールさんはオランダ出身ということですけど、土佐に和紙漉きを学びに来て、この梼原で始める背景はどういったものがあったんですか?梼原って高知の中でもかなり外れた場所にあたることになるかと思うんですけど。

何かね、昔ながらの日本。自然と上手く関わっている。そういうフィーリングが残っとるなぁ、て。もう全部ハウス栽培やっているとか、高速道路がバンバン前を通っているとかじゃなくて。そのまま原風景が残っている。もう1回そこからスタートして、その知恵を学んでそこからもう1回新しいものを作るベース。みんな思い出しているというか、思い出す場所。

ある意味、進んでいるのが悪いとはいわないけど、進みすぎて見えなくなっているところをリセットできる場所という。

そうです。みんなの生活に全体的にすごく残っている。空気が。そこがベーシックに1回戻って。あとはもうひとつはここ標高が高いから。和紙はよく言われているのが寒いのが良いですね。高知の中で寒い時期が長い。だからもうちょっと長く良い紙ができる。それも大きかったね。

道の駅「ゆすはら」に温泉があるじゃないですか。あそこに行ったときにお客さんが「ここは高知のチベットだから」って(笑)

そうなんです(笑)

ですけど、その梼原の中でも特に高いわけじゃないですか。

はい。そうそう(笑)ほとんどカルストにくっついている所だから。

それだけ長い間、寒い時期が続く。

そう。ちょっとでも。1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月でも伸びて。寒い時期が。特に、なぜ寒いのが大事かというと、私の場合、防腐剤とか化成ソーダとか一切使わないから。だから寒いのが命ですね。ちょっとでも温度が上がると原料は駄目になるので。ちょっとでも長く、寒いのが良いのができる。

作業場からの見晴らし

高い場所にあると水をどうやって確保するのかというのが大変だと思うんですけど、その辺はどうなんですか?

ここはすごい水は豊富ね。それとそれぞれの沢で全然水質が違う。ここはすぐ上がカルストだから。地盤が弱いから枯れたりすることもあるけど。

いま枯れている水はいっつも出てた。昔から雨があってもなくても。出る水はどこかからか沸いてきていた。それはカルストの影響はあった可能性はあったりする。だけど地すべりのボーリングやって、全部いっちゃった。ボーリングも必要だから。すごい水溜まってたよね。それを抜かないといけないって。元の沸いている横も何回も崩れているから。あの辺、全部危ないから。まぁ、しょうがないというか。ほとんど危険地域ですね。ここも

結構、ここ地すべりが多いんですね。

水が豊富すぎて。ここは蛇紋岩という地すべりの多い土地だから。近くを通っている水もアルカリ性。

もしこれで酸性雨だったら、ちょうど良いですね(笑)

そうなんですよ。良いですよ。もっと上の方の村は、アルカリ性高いからそのまま撒いてる。美味しいお米も取れるし、畑に水撒きにそれを使ったらちょうどアルカリ性も増えて、それを使ってる。

普通だったら石灰とか撒きますものね。

しなくても良い。雨の水を何年か計ったんですよ。全国の酸性雨の調査に協力して。4だったり酷いですよ。もう、ほうれん草とか人参できないね。4が降ると。台風のときとかはそうでもないけど、西の風が吹くとハッキリ。4は結構酸っぱいですよ。だからちょうどアルカリ性というのは良い(笑)

中性になって。

4は野菜はできないね。悪くなるね。化学肥料をガンガンやったら誤魔化せるかもしれないけど、あんまり良くないね。最近は計っていないからわからないけど。

ロギールさんのお仕事というのが紙漉きの部分だけじゃなくて、森の管理とか森林とかの保全もされているということなんですけど、通常の伝統工芸だったら家具とかだったら木を扱って森と繋がるけど森と木だけで終わってしまうじゃないですか。それが和紙の場合は、森と人の村との境の所。だからその先の森も入ってくるし、そしてそこに流れてくる水もずっと関わってくる。

そう。その通り。

人間が自然と関わる部分というのが全部関係してくるということですよね。

そうですね。人がかなり上手に自然のリズムに添いながらまとめてくれたのが和紙ていう。そこがみんなホッとすると思うね。それが魅力でしょう。和紙は。あまり直接じゃなくて。「和紙」という言葉だけ知っている、和紙を見たこともない人に和紙を見せたら、ホッとするねって。暖かいねって。なんでみんな言えるのって考えるね(笑)若い、30代から下の人たちの反応を見て。家に障子もなかったかもしれない。それは何か引っ張り出してくれる。そこが力。そこを活かせば。

みんな、一般的に和紙は使われていないね。だから、障子はあんまりいらんかったら、じゃあ何のためにあるのこの和紙は?それもひとつの役割。全部障子じゃなくて1枚だけでも十分。そこから和紙の世界とか、読み取れると思うけどね。