黒谷和紙:ハタノワタル ~紙フェチの国ですよ。だから潜在能力はすごいあるんですよ。~

紙フェチの国ですよ。だから潜在能力はすごいあるんですよ。 (1/4)

黒谷和紙の若手の代表の一人として枠に留まらない活躍をされているハタノワタルさん。若手の新しい視点がこれからの和紙の展開のひとつのヒントとしてなる部分もあるのかと思います。「日本は紙フェチ」との言葉はある意味納得。説得力のある言葉でした。

和紙を使ってくれる作品に合わして宣伝していくネットワーク

ハタノさんが開催された、この前の展示会木と紙と古いもの展の様子を拝見させていただいて、つくづく思ったんですけど、ハタノさんはあれなんだなと。マテリアル・フェチなんだなと(笑)

ハタノワタル:木と石と紙展

結構そうかも(笑)油絵出身で、油絵ってマチエール好きというか。

あぁ、そうなんですか。和紙を使う人ってどちらかというと水彩などから入っている人が多いじゃないですか。

僕の和紙との出会いは油絵から来ているんですよ。

そうすると和紙にドーサなどを下に塗った上で油彩をのせていっていたと。

最近は油絵の絵の具は使っていないんですけれど。僕の技法だと手汚れるしって。それを日本画とかでやっているんで。もともとは油絵だったんです。

それで最初に黒谷和紙を使ってということだったんですか?

強いという所がやっぱり利点ですよね。

全国、強いって形でやっている和紙が他にも色々とあるじゃないですか。その中で黒谷を選んだというのはどういったところだったんですか?

それは小津和紙さんってあるでしょ。そこで一番強い和紙ってどこって聞いたら黒谷って聞いたんで。そんなん、そのとき は和紙屋さんって。21、22歳で日本で一番大きいと言われている和紙屋さんが、どこが一番強いって聞かれて黒谷和紙ですって言われたら黒谷和紙!って思 いますでしょ。それからほぼ黒谷和紙しか使っていないですよね。他の産地の紙も少しは使ったことあるんですが・・・。美濃さんとか、小川とかを使って名塩も使ったこともあるし。

今考えたらわかるんやけど、この美濃と言っても小川と言っても名塩といってもいろいろな紙があって。でもユーザーというのはその産地の紙はこれっ!て一番最初に渡された紙がそこの紙なんですよね。で、私が渡されたんのが黒谷和紙で、しかも一番強い和紙が黒谷和紙って和紙屋さんに言われるとそうなっているんだと。いまだに続いている。だから比較したわけじゃない。

それが最初のきっかけとなってこちらに来てということで。

結構強い和紙っていうのも他にもあって比較しているのかなぁと思っていたのですけれど……。

いや比較している暇はないですよね。学生さんとか。そういう色々なものを買うお金もない頃だし。ユーザーになって、ユーザー歴10年、20年ってなったぐらいに色んな人の情報を聞いて色んなものを使って、多分何となくわかる(笑)強度の問題に関しては、どこまで強いか強くないかっていうのはその人個人の求めるところなんで。

例えば、100あるうちの黒谷和紙は105強いですと。こっちに和紙は90いくつやと。こっちは黒谷よりも15強いと。だけどユーザーは60で良いってなったらどっちの紙を使っても強いってなる。その辺の話っていうか。それだけのことというか。この業界に入って思ったんけど、そういうことってすごい多いなって。ハッキリ言うてしもうたら(笑)

そういったことも含めて、一番最初に黒谷和紙っていうのはもともと縁があったのかなぁことなんですかね。

うんうん。で、色々とやっているうちに、じゃあ作り方がキチッとしていたら強い紙ができるかって話になってくるじゃないですか。じゃあ全国のどこの若い人の紙でもその方法さえ共有できて、その方法で作って、こういう原料で作っていますっていうことに関しては信頼が置けるようになって。それやったら全国の若い者で手を繋いだほうが全然良いやろってことが。

ここの得意な分野に関しては、彼のところに行けば良いよって。そしてこれに関してはこっちに行けば良いよって。僕が感じているのは、やっぱりプライヴェートでの付き合いも含めた職人と使い手との密な繋がり。それと今僕がやっているのは、和紙を使ってくれる作品に合わして僕も宣伝していくというか。そういう密な関係に。人間関係って大切やないですか。

そういったネットワークがあることが一番、ユーザーにとっては良いですよね。それを作りたいなって思っているんですけれど。


本当はもっと多様なことができて、多様な使い方ができる

最近ではTwitterとかもやられてますよね。情報共有ってところで言うと、若い漉き手の人たちがどこの何産の楮を何%使っているとかそういった情報を全部出している。その情報を出しているのを見て、私なんかは何を思うかというと本当に自分自身に自信を持っているんだなぁと。

結局、同じ配合であってもその人の作り方によって絶対に同じものは作れない。

作れない作れない。

単にそれは出発点のヒントだけでしかない。それがヒントだけであったとしても、最初の出発点の部分というのはある程度共有しておいて良いんじゃないかなっていうのは私なんかは思うんですね。それが今やられている重要なところのひとつなのかなぁと。作り手のほうからの視点でということで言うと。

後、受け手のユーザーさんに対してどういう使い方をするときに、どこに行けば良いっていうのが情報が全くと言って良いほどないじゃないですか。

うん。多様化しすぎて。「和紙の使い方=これだっ!」っていうのがなさ過ぎて。これだっ!っていうのがなさ過ぎるていうのは、求めているところが多種多様なんです。専門がいない。専門的なところが表具屋さん、文化財修復のところしかないって状況になってしまっている。それが和紙業界を辛くしている。

本当はもっと多様なことができて、多様な使い方ができるんですけれど。結局使われるところで専門分野がそこしかないっていうとみんながそこに行くやないですか。そこで弾かれると……。黒谷和紙は修復に関してはそんなに出ていないんで。文化財のシェアから言うと割と外され組のところはあると思うんですよ。ただそれが良い紙じゃないかって言ったらそうじゃないですよね。それはやっぱり昔からの繋がりであるとか、タイミングであったりとかそういうところがあって。

じゃあ新しいところを作らなくちゃいけないって。それと同時に作りながらも最低限使っているそっちの使われているところの専門分野はかなり意識しながらやっていかなくちゃいけない。そうなってくると仏具の世界だとか、表具の世界というのもやっぱり学んでいかないことには。やりながら学んでいこうていうか。

いつでもそういった話がチャンスがあれば直ぐに対応できますよって。

そのために防腐剤を使わないネリを使ったり、国産の楮を持っていたりしているわけやし。