黒谷和紙:ハタノワタル ~紙フェチの国ですよ。だから潜在能力はすごいあるんですよ。~

紙フェチの国ですよ。だから潜在能力はすごいあるんですよ。 (3/4)

黒谷和紙の若手の代表の一人として枠に留まらない活躍をされているハタノワタルさん。若手の新しい視点がこれからの和紙の展開のひとつのヒントとしてなる部分もあるのかと思います。「日本は紙フェチ」との言葉はある意味納得。説得力のある言葉でした。

昔の人はそれでやっていたって言うから絶対できるんやと。

体が反応してしまう。逆にそれ、ハタノさんからするとすごく良かったですよね。

そうですよね。そういう情報があって、そういうところで悩んでいる人がたくさんいて。じゃあ、手漉きって何やろ?とか考えるときに、やぱりオーダーで受けてオーダーで返せるってところしか残らないと思うけど、そのオーダーに応える紙をとりあえず漉いとこうと。

だって今までだったら、ほとんど今の紙漉きの人たちからしたらトロロアオイっていうのは保存液に入っているのが、それが当然。そこに関しては誰も疑問を持っていない?

そんなことないです。みんなそこがネックです。黒谷でも他の連中もそこがネックなんですよ。で、ほんじゃ僕が黒谷で紙を納めますってなるじゃないですか。これは防腐剤を使っていないから高く買ってくださいって言ったところで、それは別にそんなの頼んでいないって話なんです。黒谷からしたら。そこに値段差もつけられないし。そうなってくると、別にそれを使う必要、使わないで良いネリを使う必要はない。

それで僕もその時にシフトチェンジを2年失敗しているんですよ。

ああ、そうなんですか。

やっぱりシフトチェンジするときにネリを使おうとしてるんやけど使うタイミングがわからない。使っててもやっぱりネリが弱いから防腐剤の入ったネリを使ってみたり、足してやってみたり。なんやろなんやろって考えたときに「もうええわっ」て。

とにかく冬の間は金が一緒であろうが何しようが、僕は使わないと決めたんです。もうそれで届いたネリを今までは半分干して、半分漬けていたのを全部干したんですよ。そうしたらもう逃げ道がない(笑)

で、昔の人はそれでやっていたって言うから絶対できるんやと。幸い嬉しいことに昔のお婆さんたちがいるやないですか。それの戻し方とかどっか知恵って残ってて。

なるほどー。

そんな人がいなかったら僕もそんなことできていない。

「昔はこうやっていたよ」という話で、夏はどうしていたかって言うとノリウツギを使っていたとか夏は漉かなかったという話なんです。

そうなんですね。

最悪いるときはノリウツギでやっていたって話なんですけれど。ノリウツギは使ったことがないんでどうとも言えないんで、夏は仕方ないので春から秋にかけては防腐剤を使ったネリを使っているんですけれど。

そういった過敏症の方がもし春先ぐらいに、やっぱりハタノさんの壁紙を作って欲しいのだけれどもとなったら、すいませんけれど今ネリを使っていないんで来年に納品になっちゃうんですという話になってくるんですか?

そうですね。それが欲しいんならば。でも、その部分で僕売れているわけじゃないし、それを正々堂々と紙に押して出しているわけじゃないですよね。ホームページにチョロッとは書いてあるけどそれを全開でうたっているわけじゃないていうのはあったりする(笑)夏はっていうのもあるし。

そういうのもやっているよって、むしろ自分自身のこだわりでやっている。

そう。その部分だけですね。

美濃の長谷川さんもやっぱり冬は使っていないんですよ。4月から防腐剤を使ったり。やっぱり文化財修復とかやっている人に関してはそういった紙もやっているというのは大事というかね。昔ながらの本来の紙を漉いているっていうのはものすごい大事で。

それに対する弊害も出ているんやないかなって疑いを掛けられたときに、それは違いますってことを言えていないと思うんです。

例えば星が出やすくなっているとか。

と思うんですよ。でもそれもハッキリとどれがどうなのかわからないんですよ。ネリの問題であったり、水の問題だったり。


機械でも良い部分ていうのはすごいあるのかもしれないって。

いくらきちんとした形でやったとしても修復の厳しい人たちの現場では色々な声が出ているのかもしれないですね。和紙が残っていく一番重要な要素として絶対に保持されるだろうというのが修復なんだと思うんですよね。その修復の部分で修復に耐えうる紙をどれだけきちんと作れるのかとなったときにこのトロロアオイなんかの保存液とかの部分まで考えていかないといけないんじゃないかとは思いますね。

そうですね。僕んとこは冷凍をやりだして。いま実は僕、冷凍庫保存もしているんですよ。将来的には大きな冷凍庫を入れてね。維持費どうしよーとかね(笑)

試してみようと。

そうですね。夏のちょっとした瞬間に、欲しいという人たちのために冷凍をやってみるていう(笑)

今年ちょっと試してみて。

そうですね。冬の間はこの防腐剤を使わない紙を漉いて、春からチェンジするやないですか。そのあとにさらに欲しいという人が突然出てきたらそれを使おうかなとは思ってるんです。

ある人から聞いた話で面白かったのが、トロロアオイって熱に弱いってみんな言っているけどあれは嘘だよって。冬の間に漉いているときに漉き舟にお湯をバサーッて入れたんですって。それでもネリ全然変わらないよって。

ああ、雑菌でしょ。要するに雑菌の問題ですよ。

雑菌なんですね。ちょっと目からウロコの話だったんですけれどね。

雑菌を呼びますからね。完全に無菌の部屋を作らなきゃいけない。雑菌が沸けばどんなに防腐剤を使ったネリを使ったとしてもやっぱり直ぐ駄目になってしまって。雑菌の問題。熱じゃないですよ。30度、40度の炎天下でも紙は漉けるんです。

雑菌の部分をどうやって繁殖させないのかということだけクリアになれば、実際は夏でも漉くことができるはずなんだけれどもということなのでしょうね。

大体、25度以上の気温になってくると雑菌が発生しやすくなってきて、そうなってくると毎日冷房をかけてやったとしても雑菌が沸くから毎日水を変えてやるということをずーっとやってるんです。

ホンマ夏、紙は漉かんほうが良いですよ。冬の間にガンッ!と漉いて。それこそホンマに思うんですけど。冬の間にいまの10倍くらいの人数でガンッ!と漉いて、夏は営業回れば良いしと思ってはいるんです。そっちの方が環境にも良いし、紙にも良いし、売るほうにも良いし、お客さんにも良いし。一番良いのはそこであって、一年間ずっと紙を漉かなくちゃいけないことになってしまったところにすごい無理があったというか。それ自体が自然の摂理から外れてしまっているというのをすごい感じます。そっちに戻したいんですよ。

戻せば綺麗事かもわからんけどどこを叩かれても「ぼくはクリアしています」みたいなことを言える。そんでそれで生活できるんかってところがあって、夏に作品を作って売りに行っているていうのは、

ああ、その背景があって。特に夏の頃にそういったイベントなども多いですものね。ちょうどそれも良いということなのでしょうね。

そうですね。そっちにシフトチェンジだっていう。そうなったら和紙の技術って何?という話になるんですけど、、、う~ん技術ね……(笑)

自分で自分に突っ込むんですよ。それは何でかというと、15年前から紙を漉きはじめて10年間は年がら年中、一番ようけ漉いたろうと思ってガーッ!て漉いていたんですよ。それでこそ技術の維持であったり、スピード感であったり、クライアントにとって一番良いものだと思っていたんです。言われたものに対して、言われたときにボンッと納めるていうか。それが一番良いと思っていたんです。

でもそれやったら機械でも良いんちゃうって。そこに来たんですよ。結局ね。それが5~6年前ですよ。機械でも良い部分ていうのはすごいあるのかもしれないって。