石州和紙: 西田和紙工房 - 西田誠吉 ~人間の感覚は体でしか覚えられん部分があるんでしょうね~

人間の感覚は体でしか覚えられん部分があるんでしょうね (3/3)

社寺の修復関連の和紙を多く携わられている西田和紙工房さん。伝統的工法で地元で楮を育てるところから一貫して作られている日本でも数少ない和紙工房さんです。また、石見神楽の盛んな地域だけに、そこで使われる和紙の話もお聞きしました。  (取材日:平成23年2月23日)

なるべく自家製とほんに良う知っている農家さんの材料を

西田さんのところでは楮はどのようなものをお使いなんですか?

そうですね。山口県境とかあの辺から来ますよね。地元が今年は6割で山口から来るんが4割。

だけど地域的には大体同じ。

大体同じ圏内、植生も一緒ですね。姫楮系の黒楮(まそ)という、皮の状態も良く似ているし。ルーツは一緒ですのでね。大体向こうを経由してこっちに来ているという。

そうなんですね。

だから大体二手ぐらいに分かれて、種類的には。ちょっと皮の分厚い高楮(たかそ)というやつと光沢の良い眞楮(まそ)というのと二種類ある。その二種類でやっています。

どの楮も作りも値段もすごい良心的ですからね。

皆さん元々、紙漉きをやっていたから。

そうそう。いちいち言わなくても。だけど、それが違うところの農協さんとか、あの辺を経由してくるようなものはただ集めたら良いもんやから、中に色んなものが入ってる。で、いっぺんばらけさせて全部仕分けして。そうせんと使えんです。じゃけ、なるべくこの地元で自分の自家製と目に掛かって、ほんに良う知っている農家さんの材料を重点的に買うように。そこのところは結局、長いとこ続けてもらえるし。

ちょっと値段が高くても。

それはもう値段が少々高くても、それは変えられんほどのものになっていたらね。まだそういった方がやってもらえるけぇ良いですけどね。そういった方もだんだん年ですからね。何年か先にはどういう状況になるのかはわからないですけどね。

そうすると主にここの地元の楮を使って。それに他のものも一部。楮は楮でも色々とありますけれど?

高知に行ったら赤楮ていうのが良いのでしょ。僕らは赤楮というのは悪いイメージなんですよ。そうやけん大体、眞楮というのが一番良くて、あと高楮というのが。眞楮から改良型が高楮というのですよ。高楮は高く伸びるから。昭和ぐらいのときに改良されて、品種改良して大きく育つやつが作られたんですよ。それがすごく増えたんです。もともとの眞楮から改良型の高楮になって。

僕ら石州半紙のは眞楮の方が良いんで、その原種、もともとの原料をなるべく残すようにしているんですけどね。

いま倉庫に山積みに、昨日で山積みになりましたんでね。それを一年間掛けてやりながら、貯まったら、、。漉く方が忙しいときと、追っかけられるときと両方あるんですよ。いまちょっと足らんぐらいなんで。ずーっとやりながら。手間掛かりますからね。

いま何人いらっしゃるんですか?

え~とですね、僕と息子と嫁はんとあと1、2、3。六人。

主に“そぞり”担当とかがあるんですか?

そうです。大概、いま三人で“そぞり”と。みんな干すこともできるんで干したり、洗ったりも。みなやりますけどね。

石州和紙: 西田和紙工房

ある程度、分業しながらも他のものもできるように。

うん、できよるね。そうせんと他に忙しいときができたらやれんので、みんなでやるようしてますけどね。紙漉く方は三人ですけど。

それだけ緩い形ではあるけれども分業になっていることで生産性は上がりますよね。

そうせんとね、生産性上がらないです。逆に言えば。毎日、一杯、二杯の船を動かそうと思ったら絶対に三人から四人、人がいないと回らないです。日々、船が動かない。じゃけ、貯まってその部分で掛かっておったり。毎日するために、そんだけの人間いるんですよ。

漉いたら、干して、洗って。そんなものもみんな入れたら。それがみんなちゃんとやっていかないと動かんです。

そうですよね。特に“そぞり”と“ちり取り”の作業はものすごく時間が掛かりますからね。

そうです。時間掛かります。それがなかなかできんけ。それに一番手間が掛かるし。う~ん、どうしても人間は要りますね。

“そぞり”はご自身でやっているというのは、石州の他のところも“そぞり”からやっているんですか?

大体どこのお家もね、自分のとこで“白そぞり”はしますね。じゃけ、外注に出したりというところはないです、ここは。それと白皮で入れるということもないと思う。大概みんな自分の頃合の原料が多いんで、黒を買い入れてそれを自分のところですべてやるという。

他の産地だと最初から白皮を入れて。それがもう正直言って普通ですものね。

そうですね。個人的に本当にやっておられる紙漉き屋さんで、全部自分で買ってそぞって、たぐってとやっているけど、それは本当に大変だろうと思いますよね。それは半分趣味みたいにしてやっとる人やったら良いけど。商売でこれでやろうと思ったら、それはもう人間が要りますよ。

もう、単価の掛かり方がぜんぜん変わってきちゃう。

でもねぇ、白皮の五分そぞりみたいな那須の高い原料なんかに比べたら、手前でやった方が大分安いわけです。

そうなんですか。

そうなったらコスト的にはこっちの方が大分安いです。人件費もそんなに、パートさんと同じぐらいでやってて。それでまぁ、無駄がまずないですよね。すべてこう、紙になるんで。

それでもう、良いやつと悪いやつを区別できるでしょ。こっちは“そぞり”にするけど、こっちはこのまま煮るのにしようかって。ここで全部分けられるから、買い込んだのが全然駄目だったというのがあんまりないんですよ。

なるほど。やっぱり他のところで聞いたことがあるんですけれど、紙漉きの人が実際の栽培のところにいて目を配っている白皮と、目を配っていないところから上がってくる白皮と全然仕事の質が違うと。

そうです。全然違います。

それは自分が漉くことを考えてやると、すごく丁寧にしますもの。最終的なところまで考えとったら。ただこれだけやる人は、上がれれば良いんだから。量(かさ)が上がって、量が増えりゃそれで(笑)

だからそれは、とてもとても。全然違いますよ。

そうなると結果的にはまた手が掛かる。

また手が掛かりますよ。

結局、ちり取りを自分自身でやらなくちゃいけないというので。

そうです。それだけ余計に手間が掛かりますよね。それに高いし。

そうですよね。それだけ原価と手間賃がどんどんかかって。

掛かってますよね。だから本当にいま、そういう原料商さんから入ってくる聞く値段とか。そういう那須の楮にしても、美濃さんとか本美濃なんかが仕入れる楮の値段を聞いたら、すごいやっぱり全然違う。高いですよ。まだこっちが大分安いですよ。

そうなんですね。

そうすると基本的には石州の周辺でできた楮が材料となっているわけですね。