駿河柚野和紙:内藤恒雄 ~富士の麓で天日干し「和紙は、あくまで素材」~

富士の麓で天日干し「和紙は、あくまで素材」 (2/3)

富士山の麓で天日干しの和紙作りに勤しんでおられる内藤恒雄さん。和紙は、あくまで素材とのスタンスで絵画用の和紙についても、細かく要望に応えて和紙を漉いていらっしゃいます。  (取材日:平成23年2月2日)

手仕事は量ができないから、作って売るまでしていかないと

内藤さんのところで多いのはどういったお客さんなんですか。

うちの主用途は書とか、絵とか、版画の作品の原紙を作らせていただいているんですけど。いまはなにせ、手漉き和紙業界だけじゃなくて自営業の方が言われるんだけど、2000年から消費がずっと冷え込んで。その影響で、絵とかも最近では肉筆とか、その先生の肩書きもあるとは思うんですけど高価になるなものなので。いまは版画用紙が主と宗教用ですか。毎年ご注文いただいていて。あとは色々なイベントにも呼んでいただいたりとか。

還暦と独立して30周年になったときに駿河半紙技術研究会という組織を作らせて頂いて、わりかし単独でも今までも紙の勉強をしたいってことで、その度ごとに10日ぐらいあけて煮ることから。うちは板に貼って天日なものですから、ひとつ組織があればちょっと入りやすいんじゃないかって。ちょうど59歳ぐらいのときに日本人なんだけれどドイツ造本の勉強をされている方がいたもので。俺はすぐその気になるもので駿河半紙技術研究会を作らせていただいて、今は3ヶ月に1回、実技研修を主に。

あと富士宮市から催しのときにイベントとして参加させていただいたりしています。

結構、ご自身の展示会というか展覧会もされているんですよね。

そうですね。あれもご縁があって。平成10年のときかな。今から12年前、静岡と地元の富士宮からお誘いを受けて展示会やらないかって言われて。それまで、お受けしたのはタペストリーが作れるようになったのがあると思うんですよね。紙ですとどうしても平面的な机の上にだと何か寂しい。

それだと展示会というとひとつの空間があって、お忙しい中をお立ち寄りいただいて一時お疲れを取る。うちはたまたまタペストリーが作れるようになったもので。自分は美術鑑賞がすごく好きで。素敵な作品であっても、飾る場所とか、飾り方によって全然違うものであって。

ライティングのやり方によって全然見え方、雰囲気が変わってきますものね。

そうですね。平成12年はまだ景気良いころだったんで、結構こんなに売れるのかなって(笑)

まあ大体、春が外。県内だと静岡と三島っていう。今年は三島なんですけれど、昨年は静岡で。今年はたまたま35周年なもので、今まではアニバーサリーのときは東京でやっていたんですね。自分の出身が東京ですし。だけども行くのが面倒臭い(笑)

前回の三島、2年前にやったときも、いま新幹線が品川発着になったもんで、あそこからだと40分なんで。かえって東京のあれだけ大きいところでやるよりかは、ちょっとローカルなところでやった方が、、。東京で展示会やったって相当著名じゃないとなかなかニュースにはならないのだろうけど、田舎でやればそこそこ。俺もほら、県内では35年やっているから。そこそこ感心のある方の間では知られているわけだから。マスコミにも取り上げられるというか。

東京の人たちも三島に。

簡単に来れる距離なもので。

内藤恒雄

ちょうど来たからということで三島の展示会を見て、帰りにうなぎを食べて(笑)それだとちょうど良い。

前回も中々評判は良かったんで今回も。今回は一週間ほど。

色々な老舗の産地だと行政単位、その地域で産業として貢献したわけだから行政からのバックアップ、行政サイドからの企画でされているものが多いですけど。なんか自分でやっていると、内藤自身が企画して自分で展示会を打つっていうのはあんまりないみたいですよね。だから、やる場所もそうだろうし。自分はよく画廊主催ので声をかけてもらうこともあるんですけど、自分のはあくまで素材なもんで。紙というのは。作品じゃないもんで。2週間やってもそんなに売り上げがあるわけでもないので。大体、画廊主催だと、その売り上げの何%をテナント料として取るのだけれど、そんなに行かないもので(笑)

俺はもう1日いくらでお借りした方が。自分が好きなように飾るっていうか。必ずやはり素敵な空間をどこでも良いって感覚じゃなくて、大変恐れ多いことなんだけれどお声掛けていただいても自分としてあまり納得行かないギャラリーの雰囲気というかね、画廊の雰囲気ってあるものですから。

さっき言ったように、ただ置けば良いってわけじゃなくて、飾り方っていうのもあると思うんで。非常にお忙しい中をお客さんはおいでいただくわけだから、一時のホッとするような。そういうのはすごく大事だと思うんですよね。

以前、掛け軸関連の仕事についていたことがあるんですけど、掛け軸を作る方も自分で展示会はされないんですよね。仕事を請けてそれをそのまま流して。自分自身でこの本紙に合わせて、こういったことできる、ああいったことできるって。皆さんやりたいっていつも言っているんですけれどやらないんですよね。

書の先生方でもハッキリ違いますよね。漢字の先生というのは作品を書けばあとは表具屋に任せて、額なんかはぜんぜん関わらないみたいですけど。やっぱり、仮名の先生方というのは揮毫された作品もそうですけど、軸にする場合も裂地の合わせとか。背景から全部、、。俺が中に揮毫された作品もそうだけれど全体でひとつの作品だと思うんで。

そうやって、ご自信でも作品を作ることでトータルな中で和紙を自分から積極的に販路を広げているわけですね。

この近年、すごく経済的に厳しくって。自分はこれしかなかったからそうなんだけど、作って売る。いまは手漉き和紙ってお仕事で関わらせていただいていますけど、手漉き和紙でなくて手仕事ていうのは量ができないわけだから。基本的には作って売るってことをしていかないと、それだけでお仕事をするとしたら生活できないと思いますよ。

どうしてもどんどん問屋さんが弱くなってますしね。

例えば作家さんなんかでも売れれば、出版社から言ってくるわけだけれど。最初はやっぱり売り込みに行ったりね。なんでもそうなんですけど、ご縁なものであって、その時代に上手く合うかとかね。よく時代から進みすぎたから駄目だとかあるけど。

自分も35年前に東京の小売店なんかを回らせていただいたんだけれど。いつも言うのだけれど、自分はもう駆け出しなものでもともとのところが100円で売っていたら、自分は40円ぐらいでお出ししなければ多分扱ってくれないだろうから。そんな価格的なことやったって。

自分は天然素材、板に貼って天日ってしているわけだから。これも学生のときに石州半紙の久保田さんのところにいたら、ドライ乾燥と板とでは値が倍違うって仰ってましたよね。例えば、ドライ乾燥が50円であれば、板の天日は100円ということだと思うんですけど。

自分は全然キャリアがないわけだから。そんなこと言ったってあれだからって。だから、作って売るっていうか。幸いに自分は東京出身だったもので。東京の例えば書であれば、どの先生に行けばどういう紙をお取引いただけるというのは大体わかっていたので。それは勉強しなくても。漢字と仮名の先生はハッキリ違うものですから。漢字の先生はどうしても本画仙、中国のね。やっぱりそれが滲み具合とか。理屈とかではなくて観念的なものなのかもしれないけど(笑)