駿河柚野和紙:内藤恒雄 ~富士の麓で天日干し「和紙は、あくまで素材」~

富士の麓で天日干し「和紙は、あくまで素材」 (3/3)

富士山の麓で天日干しの和紙作りに勤しんでおられる内藤恒雄さん。和紙は、あくまで素材とのスタンスで絵画用の和紙についても、細かく要望に応えて和紙を漉いていらっしゃいます。  (取材日:平成23年2月2日)

和紙は、あくまで素材って感覚があるものですから。

やっぱり、板干しにやっているものとドライ乾燥のものと紙の質感は変わるんですか?

一番最初、ドライ乾燥で自分が違和感があったのは、まず毛羽立つんですよね。自分が勉強させていただいた40年前。いまはほとんどステンレスになりましたけど、昔は鉄板だったもんで。だから大体、4~5年するとどうしても。漉いてプレスして、水で戻して鉄板に貼る。そうしないと乾燥物貼ったって離脱しちゃうわけですから。ある程度湿らせて鉄板へ付けるわけだから。だからすぐはあれだろうけど、4~5年先になると鉄粉が出ますよね。あれが俺すごく、、。それと何せ毛羽立つ。どうしても自分でいたずらで書くもんで、凄いですよね毛羽立ちが。あれが凄い違和感があった。

それとドライ乾燥でやってるとどうしても、、、。どうして板のほうが理想的かというと、紙も繊維層だし板も繊維層。だから同時に乾く。何でドライ乾燥に問題があるのかって言うと紙は繊維層だけれどドライは鉱物なもので。乾燥する度合いが違うっていうか。ドライの表面しか乾かさない場合、パルプ質みたいな短繊維の場合は良いけど、長繊維を使うのであれば。やっぱりこれがしっくりくる。

だから自分は板のほうの天日だけど、これもひとつオリジナルっていうかこだわり、自分の我がままですけど貼る日は貼る日なんですよね。絶対に天気が良くても出さないんです。板にこの紙がウェットして。そうしないと紙が伸びないものですから。だから紙と板が馴染む。うちとしては陰干しっていうのをやるんですよね。貼る日にいくら天気が良くても出さない。そのときは貼るだけにして。だから次からが勝負なんですよね。

板が馴染むって言うかね。自分はどうしても、いままでの紙、手漉き和紙って大体、縁は切ってしまう。自分はこの耳が付いてのひとつの完成品だと思っているんで。それはヨーロッパの方が、耳が付いているっていうのが手漉きって認定するって言われるもので。切っちゃったのは手漉きとしては認定しないみたい。

だから耳が付いているものがちゃんと上がるには陰干しをやった方が自分はよりベターなのかなと。時間が掛かるんですけどね、もちろん。

やっぱり木自体が水を含むと膨らんだり縮んだりするのが少しあるわけじゃないですか。それがちょうど、紙を貼ると紙の収縮と同時に木も収縮してって形で上手い具合に。

いままでは大体楮だったから。繊維が長いから板に密着しやすいんですよね。三椏なんかは繊維長が短いから、平均で3mmなもので楮より離脱するのが多いですよね。だからそういうところで非常に難しいというか。

先ほど仰っていた、鉄粉の問題で言うと多分、紙に鉄粉が混じっていると10~20年経ったときにシミとして出てくるわけですよね。

出てくるはずです。言い方は星とか言い方あるけれど。それがちょっとね。

代々やってきたわけじゃなくて、自分は希望でこの仕事をやらせていただいているわけで。だから収益とかじゃないもんで。よりオリジナルというか、内藤の紙を作らないと営業にならないんで。言葉的にいつも隙間産業って。大手がやっていないところをコチョコチョと(笑)

吉野の宇陀の楮に白土が入っているのは当たり前なんだけれど、三椏に白土を入れるとか。あれも最初は難しかったんですけどね。でもね、何でもそうなんだけど成功すれば簡単なものでね。ああ、こういうことだったんだって。白土の入れ方を変えれば良いだけのことで。本当にミルク状になっちゃうもんで。なんでもそうなんですけど諦めないというのがね。

中学から私立だったんですね。そこが建学の方針が“Never die”、直訳すれば死なないということなんだけど。いわゆる諦めないってことだったんだと思うんですよね。それで40年やってきたんじゃないかなって。

どのお仕事でも合う合わないっていうのがあるけど、紙漉きはまだ下手だけれど、この手漉き和紙業にいて、内藤が少し果たせるのは手漉き和紙のお仕事を啓蒙するというか。日本独自で世界に誇れる手仕事。手漉き和紙のキャッチコピーは俺は付けているものなんだけど、日本人よりも欧米人のほうがものすごく関心を持っているわけだし。これだけの手間が掛かっていて、これだけの値段。だからみんな辞めていくわけだから。ある程度、手間が掛かった値が紙に反映されれば。

自分は既存の紙屋さん。人を使っていればどうしても賃金を払わなければいけないわけだから。多少、親方としては納得行かなくても入った仕事はあるだろうけど。自分は自分で柚野紙って看板を立てているわけだから。自分の本当に我がままを通して行こうかなって思っているんですけれどね。

柚野手漉和紙工房

内藤さんはお客さんの要望に応えてかなり柔軟に、厚さや材料、加工も対応しているということですけど。

うちは流通が直接、A先生、B先生、C先生ってあるんですけど。自分が楮、三椏、雁皮と作って、オンリーもあるしブレンドもあるし。それで各先生方って大体ご趣向が決まっていて、楮を主体に使う人、三椏を主体に使う人、雁皮を使う人ってあるんですけど。自分はあくまで営業でやっているわけだから、楮バージョンのところへ三椏を持っていったり、三椏バージョンのときに楮を持っていって、雁皮のところへ三椏を持っていってって。少しでも、1枚でも買っていただきたいのが根底にスケベ根性があるわけだから。

だけどね、やっぱり紙って所詮、素材なもんで使い様。理屈じゃなくて、筆記用具と同じで自分は鉛筆が良いとか、付けペンが良いとか、筆ペンが良いとか。そういうのと同じみたいですよね。

確かに、楮系のところへ三椏を持っていくとこれも良いよねと言うけど使ってみてやっぱり。表現方法って先生方各で工夫しているわけだから。やっぱり、俺は楮だよね、俺は三椏だよねって。各先生方も2~3年ずつで傾向が変わってくるもんで、それでオンリーもあるし、楮に雁皮を入れるのもあるし、楮に三椏を入れるのもあるし。それはもう先生がお作りになる、書かれる作品に合わせて原料配合していくものですから。

天然素材で板に貼って天日というのは変わらないですけれど、その原料配合によって、、、。俺はもう現場主義なのもので、直接その先生方のところに行って作品を見させていただいて。

うちの紙も結構、特徴があるもんで。例えば版画の先生の展示会へ行って。京都なんですけれど本当に一番面白いのは、現場は5分位なんですね。ざーっと見れば俺の紙だってすぐにわかるものだから、それを確認すれば。もちろんオープニングのパーティーのときに行くわけだから、あとは飲み食いがあるわけだけど。本当に現場は5分位ですね。

それとわざわざ来てくれたってことが迎えてくれる方からすると、この田舎からって。その作家もここへこられたこともあるんで。すごく街中にあるわけじゃないし。新幹線の新富士駅からも車で大体40ぐらいかかるわけだから。あんな辺鄙なところからわざわざ来たという。ただ買っていただくということではなく、そういうものも含めての営業努力はすごく大事だと思いますよね。ただ、何枚買ってくれ、何枚買ってくれって言うのじゃなくて、やっぱりお使いいただいての。

なんでもそうだけど、完品というのは100%完成品というのはありえないもんで。やっぱりどこまでお許しいただけるかと。それは実際お使いいただいてどうなのかというね。

そのどうなのかということで言うと、普通だったら紙屋さん、紙漉きの人が自分自身で作って持っていって、それを買ってくださいっていうのが一般的ですよね。内藤さんなんかは、絵描きさんとか書家さんなんかにドンドン合わせていくってことなんですね。

そうですね。あくまで素材なもんで。だからさっきも申し上げたように、楮系、三椏、雁皮。これはハッキリするもので。その中でちょっと荒い方が良いとか、もうちょっと肌理が細かくてとか。それは原料配合でどうにでもできるものですから。

そこまでやはりマネージしていくというのがお客さんに対して一番優しい。

そうですねぇ。それはもう完成品であればあれだろうけど、あくまで素材って感覚があるものですから。お使いいただいてなんぼって感覚なものですから。


駿河柚野和紙 : 内藤恒雄
http://www.youtube.com/watch?v=WO2ghtWaAUc

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