阿波和紙:アワガミファクトリー ~インクと一緒に何か手の痕跡をどう残していくか~

インクと一緒に何か手の痕跡をどう残していくか (1/3)

国内外のアーティストを受け入れてのコラボレーションや、写真の印刷に使えるインクジェット対応和紙など様々な和紙を製造・企画・販売をされています。その柔軟な姿勢も長年続けてきている研修などの背景があるのかもしれません。  (取材日:平成22年12月24日)

「紙」って入れてピュッ!て一番に出てきたら大したもんや。

阿波和紙さんの売りってインクジェットというのが一番の中心になってくるんですかね?

年々伸びはありますけど。中心にしたいんやけど、まだなっていない。需要は増えてっているけど、知ってもらっている。知り始めてくれているってゆうか。

本来はマーケティングから始まって、もっとマーケティングの費用を掛けながらやって行ったら、最初のインパクトを与えながらボリュームが増えていくんですけれど、うちは下積みでしょ。本来はこの商品売れると踏んだら、バカッとお金掛けますよね。見本市をするか販促をするか何をするか。テレビのコマーシャルとか新聞とかしよるで。よその会社は。

一番面白いのが、例えば小林製薬さんとかのもんや。ブランド戦略から始まって…、大阪商法よな。ごっつベタよな、名前からしてみて。うち、澄まし過ぎているんよ。“AWAGAMI INK JET PAPER”とか。澄まし過ぎたネーミングで行くからなかなか浸透せんのよね。

それとまぁ戦略としては、うちはプロ仕様て戦略でしょ。ほしたら結局、一般のパーソナルユースでなくプロユースのものを作るっていう話から行くから、プロの写真家とかプロの版画家とか大学の先生とか。そっちからずーっと攻めていっとるから。それの浸透に時間がかかっとる。

ピラミッドで言うと、まず頭を押さえてから少しずつ底辺が広がっていくかなという方法論でやってる。

そうそう。ただ、お金がないもんで例えば日本で一番有名な、世界で一番有名な写真家に500万円出します。作品作ってくださいって持っていったら、500万円撮影代、500万円販促なんかにしたり、雑誌作ったりして1000万円ボーンて使ったらアッという間に今の10倍は売れよる。

けどそういうプランができない(笑)

それできたら苦労していないですよね。皆さん(笑)

自分で考えないのだったら、電通・博報堂へ行ってこの商品、こうやって売り出したいんですけど考えてくださいて言ったら丸投げしたら。お金さえあればよ。

かと言ってその補助金で、そんな1000万とか出してもらえないですものね。

補助金貰ったら、コツコツ下から。今年、何かで開発して、誰かに頼んで展覧会して、コツコツですよ。自前のお金を使うならこんなことせぇへんですよ。人のお金、1/2とか1/3貰いながらやっていくことやったら、な。それにしても200~300万いるからね。

やっぱりコツコツ、少しずつ浸透させているのが今の状態。

だから売れんもん。

だけどネットなんかで「和紙」で検索すると阿波和紙さんなんかは上位に来るじゃないですか。

いや、ほれは……。あんたよう知っとるじゃんか。よそがないから、よそがしてないから。そんだけのことじゃん。だけど「和紙」って誰が検索する?

実際そうですね。

あんたやからするんやんか。そう思えへん?われわれやかから紙の世界に関わっとる人間が「和紙」て検索して、「アワガミさんヒットすごいねぇ」て。

だけど、それは全体の「和紙」の中での話だってことですよね。だから全体でもっと広げて見ると、やっぱり厳しいというのはありますよね。

だからデザイナーの先生が紙使いたいって。「紙」て言ったときにウチがピュッ!て出てくるかって。「紙・デザイン」とかキーワードを入れて。「和紙」なんか入れへんもん。

写真家がな展覧会開きたい。こうこういった柔らかいイメージにしたい。そういう風なキーワードを「紙」って入れてピュッ!て一番に出てきたら大したもんや。「和紙」として出てくるのは当たり前なんや。「和紙」って思いつくか思いつかんかって。

選択肢の中にキーワードとしてその人の頭の中に出てくるかどうかということでいうことですよね。

無いけど出てきたら凄い。無いけど出てきたら凄いですよ。


一番良い方法というのは競合が出たらええんよ。競合が。

やっぱり何か「紙」でとなったとき、まだ和紙というのが全般的な中のひとつの選択肢として上がってきていないのは実状ですよね。そこのところを変えていかなきゃいけないということなんでしょうね。

実際、いま仰った話って和紙のところだけ考えていると出てこない話じゃないですか。その話を聞いたどう感じたかというと、阿波和紙という和紙だけじゃなくて、そのプラスアルファ。もうひとつ上の壁、それを見ているんだなぁと感じましたけれど。だけれどわしの会社さんなどを回っていて、その視点って持っているところって少ないなぁと感じるんですよ。やっぱり、「和紙」の中でどうやっていくかという形でみなさん考えているんで。

それじゃなくて、和紙って一般の人たちは、「紙」というときに選択肢の中に実際はいまほとんど入っていないという実状をまだ直視し切れていない会社さんて多いように感じるんですよ。その中で「和紙」というのが選択肢として出てくるためにはどういう風にやっていかなければいけないのか。プレゼンテーション、最終的にはブランドイメージをどうやって作っていくのか。そういったところまで持っていかなきゃいけないんでしょうけど。

実際、1000万円使って、ドーン!と展覧会やったら浸透する可能性はあるのでしょうけれど、そういったのはなかなか出来ないわけじゃないですか。その中でどういう風に対処していくのかというのがいま一番問題なんだと思うんですよ。

だけどそこまで考えているところってあんまり聞かないんですよね。

それは自分の位置をどこに置くかだけなんで。買う方、消費者に立って考えたら当然それは出てくるはずなんですよ。例えば、車を買おうかとなったときに外車買おか国産車買おかて、選択するで。例えばな、国内車買おかってなったときに選択肢に入るか入らんかでしょ。トヨタ買おか、ニッサン買おかって。軽やからダイハツでええんかなって。ほれに入らんかったらな…。その中でどっちかって思うだけなんですよね。

だけど今の言う印刷したい、インクジェットに使いたいて言うたときに「和紙」って思ってくれるかどうかって。ほれやったらいまのエプソンの何とかとか、ピクトリコやって言われたら困んのや。そのときにアワガミのインクジェットってピュッ!て出てくれるかどうなんか。その選択肢でしょ。われわれが選択するんとちゃうから。それをどういう風に意識、潜在意識にどう埋め込んでいくかだけなんで。

カメラを持っている人がインクジェットを使って印刷しよるかって。何にしますかってなったとき、和紙にしますって。和紙だったら徳島ですって言うてくれたらな(笑)

ほんで100人に聞いてな1人おったら大したもんや。売れて売れてえれまくるわ。ごっつ、マーケットあると思いますよ。

そこのところ。消費する人のイメージにどうやって組み込むかということですよね。少しずつ認知は広がってきているんでしょうけど、どっかでブレイクスルーというか、ドーン!と「和紙なんだ!」って形で出てくるところまで持っていくのが大変なんでしょうね。

やけど一番良い方法というのは競合が出たらええんよ。競合が。うちと同じような品質を作るところがあって、お互い切磋琢磨しながらマーケットを広げていくというのが。そういう風な競合が出来たら一番広がるきっかけにはなるわね。だからわれわれの戦略としたら蹴落とさんとあかんのですよ。そういうところはね。品質で蹴落とすんか、価格で蹴落とすんか。何かで。要は占有率だけになってくるんで。ある程度、誰に聞いてもアワガミですって言ってくれるか、言うてくれんかですよ。

いまだと表立ってネットなんかでインクジェット対応でやっているのって阿波和紙さんと伊勢和紙さんぐらいですものね。かといって伊勢和紙さんの一番のネックというのは、生産量がどうしても追いつかないって。

そういった面では大量にやるということだったら阿波和紙さんなんかが結構やりやすいのかなぁと。そうでもない?

そうでもない。やっぱり靭皮繊維、越前が楮をあんまり使わんというのと同じなん。あれ大変なん。楮が多くなればなるほど。ああいう天然繊維を使う限界はあるね。