東京国立近代美術館フィルムセンター(中央区京橋3-7-6、03-5777-8600)は11月25日から2012年1月15日まで地下1階小ホールで「文化庁『工芸技術記録映画』の特集」を開催する。
文化庁が1971年度から重要無形文化財に指定された伝統工芸を記録する「伝統工芸記録映画」(現「工芸技術記録映画」)の制作をはじめ、これまでに42本の映画がつくられている。今回は第1作の「蒔絵(まきえ)-松田権六のわざ」から2010年度の最新作まで42作すべてを11月25日から毎週金・土・日曜日の3日に限定して35ミリフィルムで上映する。
また、東京国立近代美術館工芸館では11月22日から2012年1月29日まで「所蔵作品展 人間国宝と近代工芸の名品」を開催し、映画シリーズと関係する主要な工芸作品約60点を展示する。
ウイキペディアによると、「重要無形文化財」は1890年制定の「帝室技芸員制度」があったが、近代的な無形文化財の保護と指定制度がなく、1950年に制定された「文化財保護法」により初めて無形文化財が法的に位置づけられた。
しかし、この制度では「現状のまま放置し、国が保護しなければ衰亡のおそれのあるもの」を選定無形文化財として選ぶ程度で、1954年に文化財保護法改正により選定無形文化財の制度が廃止され、無形文化財としての価値に基づき、重要なものを「重要無形文化財」に指定するという制度に変え、1955年から認定された。
重要無形文化財の対象は無形の「わざ」で、芸能や工芸技術といったものを指定し、その「わざ」を高度に体得している個人または団体を保持者・保持団体として認定する。重要無形文化財保持者として認定された個人を一般に「人間国宝」という。
ほかに「総合認定」の例としては、「雅楽」における宮内庁式部職楽部部員、「能楽」における社団法人日本能楽会会員などがある。「保持団体認定」の例としては、輪島塗技術保存会、本場結城紬保存会、本美濃紙保存会などがある。
「人間国宝」は芸能分野(延べ168人)、工芸技術分野(重複もあり、延べ165人)に分かれ、保持者の死去に伴って認定も解除される。2010年7月現在は芸能分野で58人、工芸技術分野で58人となっている。
上映するのは「蒔絵-松田権六(まつだ・ごんろく、1896-1986)のわざ」(1971年、31分、カラー)、今泉今右衛門(いまいずみ・いまえもん、1897-1975)の「色鍋島(いろなべしま)」(1972年、29分、カラー)。
「有職織物(ゆうそくおりもの)-喜多川平朗(きたがわ・へいろう、1898-1988)のわざ」(1973年、30分、カラー)と8代岩野市兵衛(いわの・いちべえ、1901-1976)と浜田幸雄(はまだ・さぢお、1931-)さんの「手すき和紙(てすきわし)」(1974年、31分、カラー)。
「日本刀-宮入行平(みやいり・ゆきひら、1913-1977)のわざ」(1975年、35分、カラー)と「伊勢型紙(いせかたがみ)」(1976年、30分、カラー)。
12代酒井田柿右衛門(さかい・かきえもん、1878-1963)と13代酒井田柿右衛門(1906-1982)によって復興された「濁手(にごしで)」を記録した「柿右衛門-にごしで」(1977年、30分、カラー)と「彫漆((ちょうしつ)-音丸耕堂(おとまる・こうどう、1898-1997)のわざ」(1978年、30分、カラー)など。
その他、取り上げられる人間国宝は鹿島一谷(かしま・いっこく、1898-1996)、増村益城(ますむら・ましき、1910-1996)、角谷一圭(かくたに・いっけい、1904-1999)、小宮康孝(こみや・やすたか、1925-)さん、清水幸太郎(しみず・こうたろう、1897-1988)、大場松魚(おおば・しょうぎょ、1916-)さん。
寺井直次(てらい・なおじ、1912-1998)、森口華弘(もりぐち・かこう、1909-2003)、大野昭和斎(おおの・しょうわさい、1912-1996)、飯塚小かん斎(いいづか・しょうかんさい、1919-2004)、斎藤明(さいとう・あきら、1920-)さん、中台瑞真(なかだい・ずいしん、1912-2002)。
奥山峰石(おくやま・ほうせき、1937-)さん、太田寿(おおた・ひとし、1931-)さん、島岡達三(しまおか・たつぞう、1919-2007)、北村武資(きたむら・たけし、1935-)さん、与那嶺貞(よなみね・さだ、1901-2003)、11代三輪休雪(みわ・きゅうせつ、1910-)さん。
北村昭斎(きたむら・しょうさい、1938-)さん、福田喜重(ふくだ・きじゅう、1932-)さん、3代魚住為楽(うおずみ・いらく、1937-)さん、林駒夫(はやし・こまお、1936-)、中川清司(なかがわ・きよつぐ、1942-)さん、井上万二(いのうえ・まんじ、1929-)さん、前史雄(まえ・ふみお、1940-)さん。
吉田美統(よした・みのり、1932-)さん、原清(はら・きよし、1936-)さん、大沢光民(おおざわ・こうみん、1941-)さん、桂盛仁(かつら・もりひと、1944-)さん、田口寿恒(たぐち・としちか、1949-)さん。
定員は151人で、料金は一般500円、大高生、シニア300円、小・中学生100円。
(2011-11-19)
※充実した映画展となるこの展示。手漉き和紙は「31分・35mm・カラー」の作品が12/2(金) 6:00pmと12/24(土) 0:00pmに上映されます。「越前奉書」の八代岩野市兵衛さんの製作工程を中心に「土佐典具帖紙」の濵田幸雄さんの紙漉きの工程を紹介します。お時間のある方は是非!